概要
Sjogren自身の原著において、顔面神経麻痺・顔面の知覚障害についての記載あり。病態は主に血管炎によるものとされてきた。1986年にMalinowらによって後根神経節への炎症細胞浸潤および神経細胞脱落によって感覚失調性ニューロパチーが惹起されることが示され、後根神経節こそが病態発現のターゲットであるという考え方が主流となった。その後の研究で、Sjogren症候群によるニューロパチーには多彩な病型が存在することが明らかになった。
ニューロパチーの合併率は10-20%と考えられている。
93%はSjogren症候群の診断前に神経症状が先行しているとの報告あり。
分類・特徴
*日内会誌 99:1764-1772.2010.
*Brain. 2005;128(Pt 11):2518-34.
分類

疫学・Sjogren症候群の診断

神経症候

自律神経障害

感覚失調性ニューロパチー
臨床所見
深部覚障害による四肢・体幹の失調を特徴とする。
初発症状:四肢末梢優位の異常感覚が多く、徐々に四肢近位や髄節性に体幹へ広がる。
経過:発症時期は不明確であり、緩徐進行性。
感覚障害は振動覚・関節位置覚などの深部感覚障害が主体で、触覚・温痛覚などの表在感覚の障害はないか、あっても軽度である。両下肢の深部覚障害のためRomberg徴候が陽性となり、歩行は両足のスタンスが広く不安定となる(失調性歩行)。筋力低下や筋萎縮はほとんどない。腱反射は全般性に低下・消失する。
瞳孔不同・Adie瞳孔・発汗障害などの自律神経障害を合併することが多い。
検査所見
NCS:MCSは正常。SCSではSCVは正常だが、ampは低下・誘発不能となる。
脊髄MRI:T2*で後索の異常高信号がみられることがある(後根神経節の障害が脊髄後索まで逆行性に変性をきたした病理所見を反映したもの)。
腓腹神経生検:軸索再生像を伴わない有髄神経線維の脱落が特徴的。特に大径線維が優位に障害される。ときほぐし標本で軸索変性像がみられる。
感覚失調を伴わない有痛性ニューロパチー
臨床所見
四肢遠位の痛みを伴う異常感覚が主体。通常,両側性である。四肢だけでなく,体幹・顔面に及ぶ場合もある。
初発症状:四肢遠位のじんじんとした軽度の異常感覚。
経過:急激に進行するものから慢性・緩徐進行性のものまで様々。
程度:ごく軽度のものから日常生活に支障をきたすほど重症のものまで様々。
振動覚・関節位置覚などの深部覚は保たれている。筋力低下はない。腱反射は正常であることが多い。
感覚失調性ニューロパチーと同様,瞳孔異常・発汗障害などの自律神経障害を合併することも多い。
検査所見
MCSは正常。SCSではNCVは正常であるがampの軽度低下があり。
脊髄MRI:T2*で後索、特にGoll索で変性が確認できる場合がある。
腓腹神経生検では、小径有髄神経線維がより選択的に障害されている。軸索再生像がみられないこと等より、感覚失調性ニューロパチーと同様に後根神経節の障害による病態が示唆されている。
多発単神経炎
臨床所見
左右非対称で、支配領域の感覚・運動ともに障害される。
感覚は表在覚・深部覚ともに障害される。
自律神経障害はまれである。
比較的急性に発症し、再発を繰り返しながら慢性に進行する。
障害部位の多くは四肢に限局され、ピリピリとした痛みを伴うことが多い。
検査所見
CRP上昇・赤沈亢進などの全身性炎症所見がみられる場合があるが、血管炎症候群などと比べると軽度の変化である。
NCS:障害部位のMCS・SCSともに振幅低下・誘発不能となる。NCVは保たれており、軸索障害パターンを示す。
腓腹神経生検:大径・小径有髄線維ともに線維密度は低下し、軸索変性像が高率にみられる。血管周囲への細胞浸潤とフィブリノイド変性を特徴とする壊死性血管炎がみられる。
三叉神経障害
自覚的な軽度のしびれ感であったり、他覚的な感覚系の神経所見をとらなければ診断できない症例がある。
1枝のみの限局性障害だけでなく、2枝以上の領域や両側性に障害が及ぶ場合がある。
三叉神経障害の約60%で両側性を呈していたとの報告あり。
片側性の場合、blink reflexに左右差あり。
多発脳神経障害
障害神経は、動眼神経・三叉神経・外転神経・顔面神経・舌咽神経・迷走神経・舌下神経。
自律神経性ニューロパチー
Adie瞳孔・下痢・発汗障害・起立性低血圧などの自律神経障害が主体となる。
tilting testで血圧低下、MIBG心筋シンチでH/M比の低下がみられる場合がある。
tilting testで末梢でのノルエピネフリン上昇がなく、また過敏反応がみられることから、末梢での交感神経の障害が示唆される。
多発根神経炎
慢性経過の感覚運動性ニューロパチーを特徴とする。
髄液蛋白の上昇・NCSでF波の異常・MRIで馬尾の造影増強がみられる。
腓腹神経生検:脱髄性変化を伴った有髄神経線維の脱落。
治療
各病型に対するステロイド治療とIVIgの反応性比較

*Brain. 2005;128(Pt 11):2518-34.
多発単神経障害と多発脳神経障害に対してはステロイドが有効であった。
神経根障害や有痛性ニューロパチーに対してはIVIgがゆうこうであった。
病型に応じて治療反応性が異なる。
有痛性ニューロパチーに対するIVIg

*J Neurol Sci. 2009;279(1-2):57-61.
IVIgは疼痛の改善に有効であり、治療効果は2-6か月程度続いた。
血症浄化療法

*Eur Neurol. 2001;45(4):270-4.
引用・参考文献
日内会誌 99:1764-1772.2010.
Brain. 2005;128(Pt 11):2518-34.
J Neurol Sci. 2009;279(1-2):57-61.
Eur Neurol. 2001;45(4):270-4.