脳死判定

目次

参考

法的脳死判定マニュアル2024

日本臓器移植ネットワーク 臓器移植解説集

脳死とは

脳は大きく、大脳・小脳・脳幹の3つに分類される。

大脳・小脳のある程度の損傷は回復の可能性もあるが、脳幹はその機能を消失すると生命を維持することができなくなる。

脳死とは、脳幹を含む脳全体の機能が失われた状態。回復する可能性はなく元に戻ることはない。薬剤や人工呼吸器などを使用することでしばらくは心臓を動かし続けることはできるが、やがて(多くは数日以内)心臓も停止する(心停止までに長時間を要する例も報告されている)。

植物状態とは、脳幹の機能が残っていて、自ら呼吸できることが多く、回復する可能性もある。

欧米をはじめとする世界のほとんどの国では「脳死は人の死」とされている。日本では脳死での臓器提供を前提とした場合に限り、脳死は人の死とされる。

脳死とされうる状態の判断

脳死とされうる状態

自発呼吸が消失し、脳幹を含む全脳の機能が不可逆的に停止するに至った状態で、法に規定する脳死判定を行ったとしたならば脳死と診断されうると判断した場合をいう。

以下の確認を行う。

  • 深昏睡
  • 瞳孔散大固定・脳幹反射(対光反射、角膜反射、毛様脊髄反射、眼球頭反射、前庭反射、咽頭反射、咳反射)の消失
  • 平坦脳波(高感度記録を含むことが望まれる):法的脳死判定時に初めて高感度記録を行って残存脳波が証明されることを防ぐために、ここでも長距離双極誘導の高感度記録を含むことが望まれる。なおこの時は法的脳死判定の記録時間、検査中の刺激等の詳細に従う必要はない。

補助検査:脳死とされうる状態の判断の確実性を向上させることを目的に、脳血流検査または聴性脳幹反応(ABR)を行うことができる。具体的には、何らかの理由により「脳死とされうる状態」の判断に迷う場合(まぎらわしい運動がみられる、平坦脳波の判断に迷うなど)には、補助検査を追加することが望ましい。その際には、脳血流の消失またはABRの脳幹成分以降の消失を確認する。法的脳死判定においても、その確実性を向上させるためにこれらの補助検査を用いることができる。

瞳孔散大固定・脳幹反射消失の代替:眼球損傷や内耳損傷を伴う鼓膜損傷または高位脊髄損傷により瞳孔散大固定や脳幹反射の消失の確認ができない場合には、確認できる項目をすべて評価したうえで脳血流検査を実施し、脳血流の消失を確認することで実施不可な評価項目を補うことができる。

前提条件の確認

  • 器質的脳障害の原疾患が確実に診断されている症例:病歴、経過、検査(CT、MRIなどの画像診断は必須)、治療などから確実に診断された症例
  • 原疾患に対して現在行いうるすべての適切な治療を行った場合であっても回復の可能性が全くないと判断される症例

脳死下臓器提供ができない場合

除外例(医学的、社会的)

【医学的に脳死が判定できない場合】

  1. 生後12週未満(在胎週数が40週未満であったものにあっては、出産予定日から起算して12週未満)
  2. 年齢不相応の血圧(収縮期血圧)
    1. 1歳未満:<65mmHg
    2. 1歳以上13歳未満:<(年齢×2)+65mmHg
    3. 13歳以上:<90mmHg
  3. 低体温(直腸温、食道温などの深部体温)
    1. 6歳未満:<35℃
    2. 6歳以上:<32℃
  4. 脳死と類似した状態になりうる症例
    1. 急性薬物中毒により深昏睡、および自発呼吸を消失した状態。
    2. 急性薬物中毒ではないが、脳死判定に影響を与える薬物が投与されている場合。その薬物の影響がないと判断された場合は脳死判定を行うことができる。
    3. 代謝性障害・内分泌障害により深昏睡、および自発呼吸を消失した状態。

【臓器移植に関する法律、運用に関する指針(ガイドライン)により脳死下臓器提供の対象とならない場合】

  1. 臓器を提供しない意思表示をしている場合
  2. 18歳未満の法的脳死判定対象者においては、当該医療機関が虐待として福祉事務所または児童相談所などに通告する場合、もしくは福祉事務所または児童相談所が虐待として介入中である場合(通告後に虐待ではないと判断した場合は臓器提供可能)

臓器提供の医学的適応と禁忌

下記のような事例では臓器提供ができない。

  1. 全身性の活動性感染症(治療されたものは除く)
  2. HIV抗体、HTLV-1抗体、HBs抗原、HCV抗体などが陽性
  3. クロイツフェルト・ヤコブ病およびその疑い
  4. 悪性腫瘍(原発性脳腫瘍および治癒したと考えられるものを除く)

法的脳死判定の準備

脳死下臓器提供の施設条件

  1. 臓器摘出の場を提供するなどのために必要な体制が確保されており、当該施設全体について、脳死した者の身体からの臓器摘出を行うことに関して合意が得られていること。なおその際、施設内の倫理委員会などの委員会で臓器提供に関して承認が行われていること。
  2. 適切な脳死判定を行う体制があること。
  3. 救急医療などの関連分野において、高度の医療を行う次のいずれかの施設であること。
    1. 大学附属病院
    2. 日本救急医学会の指導医指定施設
    3. 日本脳神経外科学会の基幹施設または連携施設
    4. 日本集中治療医学会の学会認定集中治療施設
    5. 救命救急センターとして認定された施設
    6. 日本小児総合医療施設協議会の会員施設

法的脳死判定の判定医資格

日本脳神経外科学会、日本神経学会、日本救急医学会、日本麻酔科学会、日本集中治療医学会または日本小児科学会の専門医または認定医の資格を持ち、しかも臓器移植に関わらない医師が2名以上で行うこと。

準備物品

  • 爪楊枝等:意識レベルの評価、毛様脊髄反射の確認、脳波の確認時に使用
  • ペンライト:対光反射の確認時に使用
  • 瞳孔径スケール:瞳孔径の評価に使用
  • 綿棒、あるいは綿球:角膜反射の確認時に使用
  • 耳鏡、または耳鏡ユニット付き眼底鏡:鼓膜損傷等について診断する際に使用
  • 外耳道に挿入可能なネラトン、吸引用カテーテル:前庭反射の確認時に使用
  • 氷水で冷やした生理食塩水100 mL以上:前庭反射の確認時に使用
  • 50 mL注射筒:前庭反射の確認時に使用(6歳未満では25 mL注入でよい)
  • 膿盆:前庭反射の確認時に使用
  • 喉頭鏡:咽頭反射の確認時に使用
  • 吸引用カテーテル:咳反射の確認時に使用
  • パルスオキシメータ:無呼吸テスト時の低酸素血症を検出
  • 深部体温(直腸温、食道温等)が測定できる体温計

法的脳死判定

順序

無呼吸テストは、深昏睡、瞳孔散大固定・脳幹反射の消失、平坦脳波の確認の後に実施すること。

また第1回目の脳死判定が終了した時点から、6歳以上では6時間以上、6歳未満では24時間以上を経過した時点で第2回目の脳死判定を開始する。

法的脳死の判定

2名以上の判定医で実施する。判定医のうち1名は遠隔での判定も可能である。第1回目、第2回目の脳死判定ですべての項目が満たされた場合、脳死と判定する。死亡時刻は第2回目の判定終了時とする。

深昏睡の確認

確認方法:以下のいずれかの方法で痛み刺激を顔面に加える。

  • 爪楊枝などによる痛み刺激
  • 眼窩上切痕部への指による強い圧迫刺激

判定方法:まったく顔をしかめたり、体動がみられたりすることがない場合、JCS 300、GCS 3で深昏睡と判定する。

脳死下でみられる運動:一般に脊髄反射と総称され、多くのものは刺激に誘発されて生じるが、一見自発運動と見間違えるタイプの運動もあり。典型的な脳死下でもみられる運動と確信できる場合には脳死を否定する根拠とはならず、脳死と診断することに支障はない。

  1. 通常の脊髄反射
    1. 深部腱反射
    2. 皮膚表在反射
    3. 病的反射
  2. その他の脳死下でみられる運動
    1. 三重屈曲反射:股関節屈曲・膝関節屈曲・足関節背屈。主に下肢への痛み・触覚刺激で誘発される
    2. 手指・母指のミオクローヌス様の早い動き
    3. 足趾の緩徐な反復性屈曲/伸展運動
    4. 痛み刺激で誘発される一側上肢の内旋/回内・伸展運動
    5. 両上肢のみの除脳硬直様運動
    6. (上肢進展を伴う)緩徐な頭部の回旋
    7. 頸部前屈で誘発される腹筋群の収縮
    8. 睡眠時周期性下肢運動類似の下肢(足関節主体)の反復運動
    9. ラザロ徴候:両上肢の屈曲挙上を主とする複雑な運動。しばしば両手を胸から顔の前で組む形となった後、緩徐に元に戻る。非対称であってもよい。

以下の運動は脳幹以上の機能が維持されている状況でみられるものであり、脳死では認められないため、認められた場合は脳死判定を行わない。

  1. 自発運動
  2. 刺激に誘発される定型的な全身性の除脳硬直・除皮質硬直
  3. 定型的なけいれん、ミオクローヌス

瞳孔散大固定・脳幹反射消失の確認

瞳孔散大固定

○瞳孔径

確認方法:室内の通常の明るさの下で測定する。

判定方法:左右の瞳孔径が4mm以上であること(正円でない場合は最小径)。

○瞳孔固定

刺激に対する反応の欠如。経過中に瞳孔径が変化しても差し支えない。

対光反射

観察方法

  1. 両側上眼瞼を同時に挙上して、両側瞳孔の観察を可能にする。
  2. 光を一側瞳孔に照射し、縮瞳の有無を観察する(直接反射)。
  3. 光を瞳孔よりそらせ、一呼吸おいた後に再度一側瞳孔に照射し、他側瞳孔の縮瞳の有無を観察する(間接反射)。
  4. 同様の操作を両側で行う。

判定方法:両側で直接反射・間接反射における瞳孔の動きが認められないときのみ対光反射なしと判定する。縮瞳のみならず、拡大や不安定な動きを認めても対光反射ありとする。

角膜反射

観察方法

  1. 一側上眼瞼を挙上し、角膜を露出させる。
  2. 綿棒、あるいは綿球などの先端をこより状として角膜を刺激する。
  3. 瞬目の有無を観察する。
  4. 両側で同様の操作を行う。

判定方法:両側とも角膜刺激による瞬目が認められないときのみ、角膜反射なしと判定する。明らかな瞬目でなくても、上下の眼瞼など眼周囲の動き(筋収縮)が認められた場合は角膜反射ありと判定する。

毛様脊髄反射

観察方法

  1. 両側上眼瞼を同時に挙上して、両側瞳孔の観察を可能にする。
  2. 顔面に手指、あるいは爪楊枝で痛み刺激を与える。
  3. 両側瞳孔散大の有無を確認する。
  4. 両側で同様の操作を行う。

判定方法:両側とも痛み刺激による瞳孔散大が認められないときのみ、毛様脊髄反射なしと判定する。明らかな瞳孔散大でなくても、瞳孔の動きが認められる場合は毛様脊髄反射ありと判定する。

眼球頭反射

観察方法

  1. 両側上眼瞼を挙上して両眼の観察を可能にする。
  2. 被験者の頭部を約30°挙上し、正中位から急速に一側に回転させる。
  3. 眼球が頭部の運動と逆方向に偏位するか否かを観察する。
  4. 頭部の運動は左右両方向で行う。
  5. 頭部の上下の回転は行わない。

判定方法:左右どちらの方向への頭部回転でも両側眼球が固定し、眼球の逆方向偏位が認められないときのみ眼球頭反射なしと判定する。

前庭反射

観察方法

  1. 耳鏡により両側の外耳道に異物がないことを確認する。
  2. 被験者の頭部を約30°挙上させる。
  3. 被検側の耳の下に生理食塩水を受けるための膿盆をあてる。
  4. 50mLの注射筒に冷水で冷やした生理食塩水を吸引し、カテーテルを接続する。
  5. 被検側外耳道内にカテーテルを挿入する。
  6. 両側上眼瞼を挙上し、両眼の観察を可能にする。
  7. 冷水で冷やした生理食塩水の注入を20~30秒かけて行う。
  8. 何らかの眼球運動が認められるか否かを観察する。
  9. 50mLの注入が終わるまで観察する。
  10. 同様の操作を両側で行う。対側の検査は一側の検査終了後5分以上の間隔を置いてから行う。

判定方法:両側とも、生理食塩水注入後に眼球運動が認められない場合を前庭反射なしと判定する。

※前庭機能が保たれている昏睡患者では、両眼は冷水で冷やした生理食塩水注入側に偏位する(眼振の緩徐相に対応する)。意識が保たれている患者ではこれに加えて注入反対側に向かう眼振(急速相)が認められる。

咽頭反射

観察方法

  1. 喉頭鏡を用いて十分開口させる。
  2. 吸引用カテーテルなどで咽頭後壁を刺激する。
  3. 咽頭筋の収縮の有無を観察する。
  4. 同様の操作を両側で行う。

判定方法:繰り返し与えた刺激にも咽頭筋の収縮が認められない場合、咽頭反射なしと判定する。

咳反射

観察方法

  1. 気管チューブより十分長い吸引用カテーテルを、気管チューブをこえて気管支壁に到達するまで挿入する。
  2. 気管や気管支の粘膜に機械的刺激を与え、咳が出るかどうか観察する。

判定方法:繰り返し与えた機械的刺激にも咳が認められない場合、咳反射なしと判定する。明らかな咳はなくても、機械的刺激に応じ胸郭などの動きが認められた場合は咳反射ありと判定する。

脳波活動の消失(電気的脳無活動、electrocerebral inactivity : ECI、いわゆる平坦脳波)の確認

電極取り付け位置と導出法

少なくとも4誘導の同時記録を行う。電極間距離は7cm以上(小児は5cm以上)とし、長距離双極誘導4誘導以上を含むこと。

心電図の同時記録:どの誘導でもよい。

頭部外誘導:前腕内側などに7cm以上離して電極2つを置いて、脳波と同条件で記録する。

電極種類と接触抵抗

電極:皿電極を推奨。

接触抵抗:0.1~10kΩ(2kΩ以下を目標とする)

感度と記録時間

高感度(2μV/mm)で15分間以上の判読を行う。

フィルター

ローカットフィルター:0.53Hz以下(時定数表示で0.3秒以上)

ハイカットフィルター:30Hz以上

交流遮断フィルター:必要であれば使用してもよい

検査中の刺激

検査中に拍手などでの聴覚刺激と顔面への痛み刺激(爪楊枝などで顔面皮膚を刺激、あるいは眼窩上切痕部を強く圧迫)を行う。

ECIの判定

脳波計の内部雑音(3μVp-p)を超える脳由来の電位がない脳波であることを確認する。

判定中に明らかな脳波活動が認められた場合は、脳死判定を中止する。

自発呼吸消失の確認(無呼吸テスト)

高度の高CO2血症、アシデミアの状態でも延髄の呼吸中枢が刺激されないことを確認する検査であり、法的脳死判定の一連の検査の最後に実施する。心肺機能によっては検査に耐えられない可能性があるため、実施に際しては十分に事前評価を行い、検査中の状態悪化に備える必要がある。

実施前の確認事項

血圧

  • 成人:収縮期血圧≧90mmHg、あるいは平均動脈圧≧60mmHg
  • 小児:年齢に応じて以下の収縮期血圧を基準とする。
    • 1歳未満:≧65mmHg
    • 1歳以上13歳未満:≧(年齢×2)+65mmHg
    • 13歳以上:成人と同じ基準

体温:深部体温で35℃以上であることが望ましい。

動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2):無呼吸テスト開始前は35~45mmHgになるよう調整する。自発呼吸の不可逆的消失の確認には60mmHg以上に上昇したことの確認が必要である。呼吸性アシドーシスの循環系に及ぼす影響を考慮して80mmHgまでの上昇にとどめるよう注意する。

動脈血酸素分圧(PaO2):無呼吸テスト中の低酸素血症を防ぐために100%酸素でPaO2≧200mmHgであることが望ましい。

実施手順

  1. 動脈圧ラインを含むモニターが適切に装着されていることを確認する。
  2. 頻回の動脈血血液ガス分析測定の準備をする。
  3. 低酸素血症やアシデミアの影響で循環動態が不安定となる場合があるため、迅速に蘇生できる体制を整える。安定化が図れない場合は検査を中断せざるを得ない。
  4. 人工呼吸器のFiO2を1.0にし、10分間程度前酸素化を図りつつ、PaCO2 35~45mmHgとなるよう換気設定を調整する。検査開始直前に動脈血の血液ガス分析を行い、PaCO2が目標範囲にあることを確認する。
  5. 人工呼吸器による換気を中止し無呼吸テストを開始する。検査中は以下のいずれかの方法で酸素投与を行う。
    1. 人工呼吸器のCPAPモード(バックアップ換気が解除可能な機器に限る)
    2. PEEPバルブのある流量膨張式バッグ(例えばジャクソンリース回路でO2 6~10L/minを流しながらPEEPバルブを5~10cmH2Oで調整する)
    3. 気管チューブ内に留置した吸引用カテーテルからの酸素投与(6L/min)
  6. 自発呼吸の確認は視診・聴診・触診などにより行う。
  7. バイタルサインに注意しながら数分ごとに動脈血の血液ガス分析を行い、PaCO2≧60mmHgになった時点でも自発呼吸が認められないことを確認する。
  8. 無呼吸を確認した時点で検査を終了し、人工呼吸器による換気を再開する。

判定基準

PaCO2が60mmHgを超えても自発呼吸が認められない場合に、無呼吸テスト陽性と判定する。

中止基準

無呼吸テスト中に自発呼吸が確認された場合、酸素化低下・血圧低下・不整脈などにより検査の継続が困難と判断した場合は検査を中止する。

ECMO装着下の無呼吸テスト

人工呼吸器による換気を中止するとともに、sweep gas流量を1L/min以下にし、人工肺での二酸化炭素除去効率を下げる必要がある。

補助検査

脳死とされうる状態の判断の確実性を向上させることを目的に、脳血流検査または聴性脳幹反応(ABR)を行うことができる。具体的には、何らかの理由により「脳死とされうる状態」の判断に迷う場合(まぎらわしい運動がみられる、平坦脳波の判断に迷うなど)には、補助検査を追加することが望ましい。その際には、脳血流の消失またはABRの脳幹成分以降の消失を確認する。法的脳死判定においても、その確実性を向上させるためにこれらの補助検査を用いることができる。

脳血流の消失の確認

以下の3つのモダリティのうちいずれかを行うことが望ましい。2回の法的脳死判定のうち、1回目と2回目で異なるものを用いても差し支えない。選択したモダリティにおいて脳血流が認められた場合は脳死と判定することはできない。臨床所見および無呼吸テストにおいて脳死が強く示唆される場合は、再検査を実施すべきである。

CTA:脳幹から脳梁までを含む範囲の動脈相と遅延相の2相を必ず撮影する。造影剤の投与経路は右肘部の皮静脈からの注入が望ましい。CTAに引き続いてCT灌流画像(CTP)を撮影してもよい。画像判定にはMIP画像あるいはSlab MIP画像を用い、必要に応じて元画像を参照する。遅延相においても内頚動脈サイフォン部や椎骨動脈V4セグメントより近位で造影剤がとどまり、ウィリス動脈輪以遠の動脈や頭蓋内椎骨動脈および脳底動脈が描出されず、内大脳静脈、ガレン大静脈、直静脈洞などの静脈灌流が全く見られない場合、「脳血流の消失」と判断される。

SPECT:脳死患者では頭蓋内に放射性物質の蓄積がないことが脳死診断の根拠となる。頭蓋と副鼻腔のみに血流のみられるEmpty skull signが脳死診断の所見として特徴的である。

脳血管造影(4V-DSA):脳血流の有無を知る補助検査のゴールデンスタンダードとされ、臨床的に脳死と判断された症例においての感度、特異度はともに100%とされている。検査に技術を要し、侵襲的であることが欠点。結果判定はCTAと同様。

聴性脳幹反応(ABR)

  • 導出Cz-A1、Cz-A2、接触抵抗は5kΩ以下
  • 刺激強度:機器最大音圧
  • 両耳刺激、刺激頻度は10Hz
  • 分析時間:20ms
  • 加算回数 2000回以上、2回の加算波形を重ね描きする
  • 結果判定:全波消失またはⅠ波を残してⅡ波以降の消失。Ⅲ波以降の出現は脳死を否定する所見となる。
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この記事を書いた人

大学病院で脳神経内科医をしています。
内科専門医・神経内科専門医を取得しました。
学生・研修医・専門医までを広く対象とした、内科・神経内科領域のまとめノートを作ります。学習や診療にお役立てください。

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