作用機序
ナイトロジェンマスタード(窒素マスタード)系のアルキル化薬に分類される。窒素マスタードのN-メチル基をcyclin phosphamideに置き換えたもの。
プロドラッグであり、活性代謝物によるDNAのアルキル化が生じる。これによってDNAが架橋され、その複製や合成が阻害されてアポトーシスが引き起こされる。アルキル化薬による架橋はRNAや蛋白質にも形成される。
細胞分裂中の細胞のみならず、細胞周期のいずれの段階においても作用する。自己免疫疾患に投与した場合、T細胞・B細胞いずれも減少するが、B細胞の方が感受性が高いという報告がある。
薬理
代謝
CPの環状構造が肝臓のcytochrome P450により開裂される(4-hydroxycyclophosphamide・4-OH CP)と細胞内へ入り、活性代謝物であるphosphoramide mustardと、主に膀胱・心毒性の原因となるacroleinに変換される。
分布
活性代謝物は蛋白質結合性が高く、脳・脳脊髄液を含むあらゆる組織に分布する。胎盤通過性が想定されており、母乳中にも少量存在することが知られている。経口または経静脈投与により1時間後には最高血漿濃度に達し、速やかに4-OH CPが形成される。
排泄
血漿からの半減期は5-9時間。48時間までに排泄が完了する。主に尿中へ排泄される。その10-20%がCP、一部が活性代謝物、残りは不活化された代謝物。
肝障害時:CPの半減期は延長するものの毒性は増強しないため、投与量の調節は必要ない。
腎障害時:毒性は増強しないが、中等度~高度の腎障害ではパルス療法での初期投与量を30%減量し、白血球数をみながら用量を調節する。CPは透析で除去される。

*Nat Rev Clin Oncol. 2009;6(11):638-47.
適用
適用疾患
各種悪性疾患
治療抵抗性のリウマチ性疾患:全身性エリテマトーデス・全身性血管炎・多発性筋炎/皮膚筋炎・強皮症・混合性結合組織病・血管炎を伴う難治性リウマチ性疾患
ネフローゼ症候群
禁忌
ペントスタチンを投与中の患者
本剤の成分に対し重篤な過敏症の既往歴のある患者
重症感染症を合併している患者
相対的禁忌
活動性感染症:潜在性感染症(結核・HBV・HCVなど)についても要検討。
好中球減少症
重度の肝障害:肝代謝
出血性膀胱炎の既往
不適切な避妊・妊娠および授乳中
使用前の注意
検査
血球測定
血清Crと尿検査
肝機能検査(アルブミンを含む)
B型・C型肝炎ウイルス感染
潜在性結核のスクリーニング(IGRA)
女性における子宮頸癌およびヒトパピローマウイルス感染のスクリーニング
女性における妊娠検査
生殖能力温存
男性
射精した精液の凍結保存:CP投与前のサンプルを採取。投与前の採取ができなければ、投与後1-2週間で遺伝子異常のリスクが最大となるため、CP完了後6-12か月後に遅らせることが推奨されている。
女性
- リスク評価
-
高リスク(>70%の女性が治療後に無月経となる):CP総量が5g/m2(>40歳)・7.5g/m2(<20歳)
中間リスク(30-70%の女性が治療後に無月経となる):CP総量が5g/m2(30-40歳)
- 方法
-
胚(受精卵)凍結・未受精卵子凍結・卵巣組織凍結
GnRHアゴニスト療法:時間的・医学的に上記の凍結が困難である場合に検討する。最初のCP投与の10-14日前にGnRHアゴニストの初回投与を行うのが理想。緊急治療の場合は2回目のCP投与の10-14日前に投与を行う。CPとGnRHを同時に投与すると、卵胞が過剰に刺激されるため、CPによる卵巣損傷の程度を増加させる可能性がある。
避妊
CPには催奇形性がある。CP投与前~投与終了後3-6か月間は避妊を行う。
P.jirovecii予防
ST合剤
使用方法
①内服CP
連日または隔日。1-2mg/kg/日。
内服中は水分を増やす。原則として半年以内に中止し、他の免疫抑制薬による維持に切り替える。
②間欠静注IVCY
500-1000mg/m2(+NS 200-250mL)→2時間でDIV。
基本は高用量(750mg/m2)、副作用の程度次第で調整検討。
月1回×6回(2週間後の白血球≧3000/μLを保つように増減)。その後、3か月ごとにDIV、合計2年まで。
CP投与の30分前から利尿のためにNS追加(2L/日)・飲水励行
CP投与の30分前から制吐薬グラニセトロン3mg/100mLdiv
CP投与の30分前からウロミテキサン(メスナ)400mg+5%TZ 100mL→30-60分でDIV・1日3回
その後にIVCY
尿量チェック(投与翌日までは>100mL/時を維持)
③低用量IVCY
500mg点滴を2週間ごとに合計6回。
使い分け
治療効果の強さ・副作用は、①>②>③の順。
効果発現は数日後~2週間ほど。
①はステロイド治療の効果が不十分・または減量すると再燃するというときに併用する。
②は内服に比べて副作用頻度が低く、治療効果も(血管炎以外では)同等と考えられる。
③は難治性の膠原病症例に対してステロイドと併用して、500mgを週1回、3週間程度点滴し、副作用が少なかったと報告あり。
IVCYの用量調整
白血球数による調整
投与開始後は、白血球数≧3,000/μLかつ好中球数≧1,500/μLを維持できるように調整する。
次回投与までに
- 白血球数の最低値が1,000/μL未満または好中球の最低値が500/μL未満:投与を中止
- 白血球数の最低値が1,000-2,000/μL、好中球の最低値が500-1,000/μL:用量を40%減にする
- 白血球数の最低値が2,000-3,000/μL、好中球の最低値が1,000-1,500/μL:用量を20%減にする
次回投与予定日に
- 白血球数≧4,000/μLかつ好中球数≧2,000/μL:上記に従って投与
- 白血球数≧4,000/μLかつ好中球数≧2,000/μLを満たさない:満たすまで投与を延期。次回の投与量は上記からさらに25%減にする。
腎機能・年齢による調整
年齢 / 血清Cr | 1.7-3.4mg/dL | 3.4-5.7mg/dL |
---|---|---|
60歳未満 | 15mg/kg/回 | 12.5mg/kg/回 |
60歳以上70歳未満 | 12.5mg/kg/回 | 10mg/kg/回 |
70歳以上 | 10mg/kg/回 | 7.5mg/kg/回 |
*Rheumatology(Oxford).2014;53(12):2306-9.
副作用
分類
- 積算量による毒性・確率的
-
易感染
卵巣機能不全(20歳代後半を過ぎるとリスクが高まる)
血液悪性疾患
膀胱癌
- 1回の用量に依存
-
骨髄抑制
出血性膀胱炎
SIADH
悪心
骨髄抑制
- 白血球減少
-
用量依存性。IVCY後、顆粒球は14日目・リンパ球は7日目ごろに最も低下することが多い。
- 血小板減少
-
通常量のパルス療法ではあまり影響されない。長期の経口投与では減少する傾向がある。
白血球 3,000/μLを目安に投与量を調節する。
最初は1-2週ごと、投与量が安定すれば月1回の白血球測定を継続する。
感染症
パルス療法より経口投与のほうが起こりやすい。P.jirovecii・帯状疱疹など。
ニューモシスチス肺炎の予防目的にST合剤を使用することが多い。
併用するステロイドをできるだけ少なくする。
出血性膀胱炎・膀胱癌
特に長期にわたる経口投与で問題になる。CPの代謝産物であるacroleinが原因とされる。acroleinは腎から排泄され、膀胱上皮障害を引き起こす。
非糸球体性血尿は経口CP投与で約50%に生じ、投与期間・投与量に関連している。
膀胱癌は総量25gまたは投与期間12か月を超えると相対危険度が上昇し、総量100gまたは投与期間2.5年以上は特に高くなる。
CPの代謝産物のacroleinと膀胱粘膜との接触時間が短縮することによりリスクは低下しうる。
経口投与の場合は朝1回の投与とし、多量の水分とともに服用する。
パルス療法の場合は1500-2000mL程度の補液とともに投与する。
大量使用時には当日・翌日は200mL/時以上の尿量が望ましい。
尿のアルカリ化はacroleinの尿路上皮への作用を高めるとされているため避けるべきである。
SH基を持ちacroleinを不活性化する作用がある。
骨髄移植治療においてmesnaが出血性膀胱炎の頻度を低下させることが示されている。
副作用としてアレルギー・血管炎に類似した皮疹などの報告あり。
投与量に一定のプロトコールはないが、CP投与量の40%を8時間ごとに3回投与する方法、CP投与量の20%を3時間ごとに4回投与する方法などがある。
悪性腫瘍
膀胱癌に加えて、白血病・皮膚癌・子宮頸癌などの悪性腫瘍のリスクが上昇する。
悪性腫瘍の発生はCP投与6年目から有意に高くなり、20年経ってもなお悪性腫瘍発生リスクは続いている。
CP非投与例に比べて高率であったのは膀胱癌・皮膚癌であった。
造血器腫瘍の発生頻度に差はなかったが、CP投与例で早く発症する傾向があった。
CP 80g以上を投与された症例の53%が悪性腫瘍を発症した。
生殖系
男性
精子の遺伝子変化・精子数の減少・不可逆的な無精子症を起こす可能性がある。
CP累積投与量が多いほどリスクが上昇する。
投与終了後に精巣機能の回復が見込める。
女性
卵胞の枯渇・卵巣の収縮や線維化により、不妊症や早発卵巣機能不全を起こす可能性がある。
●累積投与量
持続性無月経のリスクは累積投与量に比例して上昇していた。
累積投与量が<5gの患者は持続性無月経を生じる可能性が低い。
CPを使用した小児SLE13例の卵巣機能評価。4例が卵巣不全となり、総投与量は平均23.1g。卵巣不全を起こさなかった症例の総投与量は平均8.0gで、4人が正常妊娠を経験した。
●年齢
25歳未満に治療を開始した場合、30歳以降に治療を開始した場合より不妊症のリスクが低かった。
その他
嘔気・嘔吐:投与前に制吐薬を使用して予防する
脱毛:可逆的・重症度は様々・完全な脱毛はまれ
SIADHによる低Na血症
肺臓炎・肺線維症・心毒性・アレルギー反応
催奇形性:妊娠中の投与は避けるべき
Wasabi nose:一過性の鼻咽頭不快感を生じることがある
引用・参考文献
Nat Rev Clin Oncol. 2009;6(11):638-47.
Rheumatology(Oxford).2014;53(12):2306-9.