概説
腫瘍細胞が全身臓器の細小血管内で選択的に増殖する、節外性リンパ腫の中でもまれな病型である。
ほとんどの例でB細胞性であり、CD20を発現している。
→血管内大細胞型B細胞リンパ腫(IVLBCL:intravascular large B-cell lymphoma)
発熱・全身倦怠感などの非特異的な症状で発症すること、リンパ節腫脹・血管外の腫瘤形成・末梢血のリンパ腫細胞がみられないことから、診断が難しい。
腫瘍細胞は、骨髄・中枢神経系・皮膚・肺・副腎・肝臓・脾臓・腎臓・甲状腺・下垂体・消化管など、様々な臓器に浸潤し、障害を起こす。

*Ann Nucl Med. 2012;26(6):515-21.
疫学
高齢者が多く、年齢中央値は67歳。
男女比は1.3:1
臨床症状
B症状(発熱・盗汗・体重減少)は大多数の患者にみられる。
個々の症状は非常に多彩であり、あらゆる臓器に関連した症状が出現しうる。
アジアと西洋で症状の傾向が異なる。
- Asian variant
-
骨髄・肝臓・脾臓の病変が多い。
血球貪食症候群が高頻度でみられる。
神経症状・皮膚症状は頻度が低い。
- Western variant
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中枢神経系・皮膚の病変が多い。
発熱・皮膚病変・神経症候(認知症・脳血管障害・末梢神経障害など)が典型的。
骨髄・肝臓・脾臓の障害はまれ。

*J Clin Oncol. 2007;25(21):3168-73.
神経症状について(654例のmeta-analysis)
*BMC Neurol. 2016:16:9.
神経症状は52%の患者でみられた。
そのうち、82%は中枢神経系障害、19%は末梢神経障害
- 中枢神経系
-
- 末梢神経
-
検査
血液検査

*Lancet Oncol. 2009;10(9):895-902.
貧血・血小板減少・白血球減少(腫瘍の骨髄浸潤や血球貪食症候群による)
LDH高値
sIL-2R高値
低アルブミン血症
肝障害:Bil高値
腎障害:Cr高値
CT
肝臓・脾臓・腎臓・副腎の腫大
肺病変:すりガラス影
頭部MRI
*Ann Hematol. 2018;97(12):2345-2352.
日本の単施設におけるIVLBCL患者33人の頭部MRI画像の検討。
29人(87.9%)に画像異常あり。
14人(42.4%)に神経症状あり。
- 分類
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a:hyperintense lesion in the pons on T2WI(n=19, 57.6%)
b:nonspecific white matter lesions(n=14, 42.4%)
c:infarction-like lesions(n=8, 24.2%)
d:meningeal thickening and/or enhancement(n=4, 12.1%)
-
- MRI所見ごとの意識障害の頻度
-
- MRI所見ごとの生存曲線
-
FDG-PET
びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)の病期分類や治療後評価における有用性は高い。
IVLではDLBCLに比べて腫瘍細胞密度が高くないため、偽陰性を生じ得る。
しかし、基本的にはFDG-avidであるため、病変の検出・生検のガイド・治療反応性評価・再発フォローなどにおける有用性あり。

*Radiology. 2016;280(2):602-10.


*Ann Nucl Med. 2012;26(6):515-21.
診断
腫瘍細胞を病理像で確認することが必要。
臓器の小血管内・類洞内にリンパ腫細胞がみられる。
CD34染色により血管内皮を同定し、CD20染色を行うと、血管内におけるリンパ腫細胞の存在が明確となる。
- 骨髄検査
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骨髄穿刺と骨髄生検をともに実施する。
- ランダム皮膚生検
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皮膚症状が多いWestern variantのみならず、皮膚症状がなくても、Asian variantでも有用。
*Br J Dermatol. 2019;181(1):200-201.25例のIVLBCL患者から得られたランダム皮膚生検の82検体の検討。
46%は皮下の脂肪組織にのみ腫瘍細胞がみられた。
腫瘍細胞の最短の深さは、中央値3.64mm、5mmを超えるものは37%。
パンチ生検では十分な量の皮下脂肪組織を含んでいない可能性があるため、切開生検を行うべき。
- その他
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腎生検・気管支鏡下肺生検
注意:血小板低下やDIC併存の可能性あり。生検による重症の出血合併例が複数報告あり。
引用・参考文献
Lancet Oncol. 2009;10(9):895-902. J Clin Oncol. 2007;25(21):3168-73.:review文献
BMC Neurol. 2016:16:9.:神経症状について
Ann Hematol. 2018;97(12):2345-2352.:頭部MRI画像について
Radiology. 2016;280(2):602-10. Ann Nucl Med. 2012;26(6):515-21.:FDG-PETについて
Br J Dermatol. 2019;181(1):200-201.:ランダム皮膚生検について