Wilson病・ウィルソン病(WD:wilson disease)②(診断・治療)

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診断

*J Hepatol. 2025:S0168-8278(24)02706-5.

*J Hepatol. 2025:S0168-8278(24)02706-5.

肝障害

*Hepatology. 2023;77(4):1428-1455.

神経症状

*Hepatology. 2023;77(4):1428-1455.

Wilson病診療ガイドライン2015

鑑別疾患

*J Hepatol. 2025:S0168-8278(24)02706-5.

肝障害

自己免疫性肝炎:小児例やステロイド治療に反応の乏しい場合は注意。

脂肪性肝疾患:MASLD・ALD・LAL-D

ウイルス性肝炎(HBV・HCV]・HAV・EBVなど)

薬剤性(バルプロ酸・イソニアジド・アセトアミノフェン・抗菌薬など)

原発性胆汁性胆管炎(PBC)

原発性硬化性胆管炎(PSC)

ヘモクロマトーシス

α1アンチトリプシン欠損症

神経・精神症状

本態性振戦

Parkinson病

Huntington病

捻転ジストニー

遺伝性ジストニー(瀬川病など)

神経有棘赤血球症

GM1-ガングリオシドーシス

無セルロプラスミン血症

Niemann-Pick病C型

統合失調症・うつ病・不安障害・双極性障害・妄想性障害・解離性障害

治療法

*J Hepatol. 2025:S0168-8278(24)02706-5.

*Wilson病ガイドライン2015

亜鉛・Zinc

亜鉛の内服によって、腸管細胞に金属キレート蛋白であるメタロチオネインが誘導される。メタロチオネインは金属の中でも銅と優位に結合するため、食物の成分として消化管に入った銅は腸管細胞のメタロチオネインと結合してトラップされる。メタロチオネインと結合した銅は腸管細胞の脱落によって便中へ排泄される。

亜鉛は同様に肝細胞でもメタロチオネインを誘導し、肝細胞への銅毒性を軽減させる。

有害事象として、嘔気・下痢などの消化器症状・血清膵酵素(アミラーゼ・リパーゼ)上昇・血球減少などがあるが、いずれも軽微なことが多く、投与中止になることは少ない。

塩酸トリエンチン

キレート薬であり、蓄積した体内銅と結合して、尿中排泄を促す作用を持つ。

保険適用:Wilson病(ペニシラミン不耐性の場合)

ペニシラミンで治療不能であった患者の治療効果が良好であり、副作用も少ないため、第一選択としてされることもある。

神経症状を有する場合、ペニシラミン投与による神経症状の増悪の頻度が高いため、亜鉛または本剤が第一選択として推奨あり。

ペニシラミンと比較して有害事象は少ないが、まれに貧血・血小板減少などの報告あり。

D-ペニシラミン

キレート薬であり、銅・水銀・亜鉛・鉛などの重金属の尿中排泄を促す。

食事中の金属と結合すると吸収されないため、食物と一緒に摂取すると吸収率が50%低下する。

少量からの開始が安全。成人なら250-500mg/日程度から開始、4-7日ごとに250mgずつ増量。

抗ピリドキシン作用があるため、ビタミンB6を併用する(25-50mg/日)。

約30%に有害事象が出現する。

  • 早期(1-3週間以内):発熱・発疹・血球減少・蛋白尿
  • 後期(数か月~数年):腎障害・SLE様症状・皮疹・筋障害
  • 多くはペニシラミン中止で改善するため、トリエンチンへの変更を検討する。

神経症状が主体の患者では、治療開始後に神経症状が増悪する頻度が高い。そのため、亜鉛・トリエンチンの使用が推奨される。

亜鉛+キレート薬の併用

併用時には、それぞれの薬剤の内服時刻の間隔をあける。いずれも食直後・食直前は避ける。

食事療法

銅が多く含まれる食品の摂取は控える。

*Wilson病ガイドライン2015

その他

血液浄化療法:急性肝炎・肝性昏睡の緊急対応。肝移植までのつなぎ。

肝移植:急性肝不全を呈する場合。

病型ごとの治療選択

治療の目的

組織に蓄積した銅の除去:初期治療

組織に銅が蓄積するのを防ぐ:維持療法

発症前

第一選択は、亜鉛またはキレート薬の単剤治療。10歳未満の年少児には、亜鉛単剤で開始。

亜鉛の単剤治療で検査所見が改善しない、症状が出現した場合は、キレート薬への変更、または亜鉛とキレート薬の併用に切り替える。

キレート薬の単剤治療で効果が乏しいときは、亜鉛との併用に切り替える。

肝型

急性肝不全・進行した肝硬変は肝移植が適応になる。

初期治療:キレート薬の単剤治療またはキレート薬と亜鉛の併用療法。特に黄疸が強い・出血傾向がある・肝障害が強い場合は、キレート薬と亜鉛の併用がより除銅効果と肝障害緩和効果が高い。

肝機能が正常化、尿中銅排泄減少、または数か月の治療後に、維持療法へ移行する。維持療法は亜鉛単独またはキレート薬単独で行う。

神経型

初期治療:キレート薬による神経症状の初期増悪があるため、欧米では亜鉛単剤からの開始が推奨されている。ただし亜鉛単剤による治療では効果がすぐにはみられないことから、日本ではトリエンチン単剤またはトリエンチンと亜鉛の併用で開始されることが多い。

維持療法:キレート薬または亜鉛を用いる。

ペニシラミン:10-50%で錐体外路症状の悪化がみられる。治療によって肝などに蓄積した銅が遊離銅として血液中に増加し、神経組織へ移行するためと考えられている。

肝神経型

神経型と同様。

参考・引用文献

J Hepatol. 2025:S0168-8278(24)02706-5.

Hepatology. 2023;77(4):1428-1455.

J Neurol Neurosurg Psychiatry. 2021;92(10):1053-1061.

Wilson病診療ガイドライン2015

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